COLUMN — FIELD NOTES

11社でNo.3を務めて分かった、中小企業が止まる共通パターン能力や熱意の問題ではなく、仕事が回っている日常の中で起きる4つのこと

著者:上津原 研介(three.T合同会社 代表)

「やったほうがいいのは分かっている。でも、進んでいない」。経営者の方と話していると、この言葉を本当によく聞きます。three.Tは11社でNo.3(社長・幹部に次ぐ3番目の推進役)として社内に入っていますが、止まっている会社を並べてみると、業種や規模が違っても形がよく似ています。そして、誰かの能力や熱意が足りないから止まっている、という話でもありません。止まる理由は、仕事がちゃんと回っている日常の中にあります。この記事では、関わってきた会社で見えてきた4つのパターンを、実際に起きたことや考えていることと一緒に書きます。最後に、自社に当てはまるかを確かめる質問も置いています。

仕事は回っている 日々の仕事 日々の仕事 日々の仕事 緊急ではないが重要なこと 「いつか」のまま 中小企業が止まる4つのパターン 1 正論では動かない 2 一社依存 3 現在地の見失い 4 一つ解決して止まる 止まる理由は、仕事が回っている日常の中にある

01「進まない」は、仕事が回っている会社で起きる

緊急ではないが重要なこととは、締め切りはないのに、会社の数年先を左右する仕事のことです。ホームページの作り直し、次の取引先づくり、社内の仕組みの見直し。今日やらなくても誰にも怒られないので、目の前の仕事に押されて後ろに回ります。

これは怠けている会社の話ではありません。既存のお客さんとのやり取りで仕事が回っていると、この種の仕事はかえって止まりやすくなります。困っていないからです。気づけば日々の仕事に追われて、今月の数字を追いかけている。中にいると、つい「進まなくてもいいか」と思ってしまう。私も、自分の会社のことになると同じです。

No.3代行は、この緊急ではないが重要なことを、経営者と一緒に前へ進める仕事です。止まっている理由は会社ごとに違って見えますが、並べると似た形に行き着きます。ここに挙げる4つのうち、はじめの3つは複数の会社で同じ形に出会ったものです。4つ目は、関わる中で繰り返し感じていることとして書いています。何社のうち何社で起きた、という数え方はしていません。

能力や熱意の問題ではなく、仕事が回っている日常の中で起きる4つのこと 1 正論では動かない 正しいと分かっていることほど、 動かない 2 一社依存 売上の多くを一社に頼ったまま、 次の柱が「いつか」になる 3 現在地の見失い 行き先は言えるのに、 今いる場所を確かめていない 4 一つ解決して止まる 一つ片づいたところで止まり、 内側の目だけで回している
図1:この記事で扱う4つのパターン(本文の02〜05章)。

よく見るパターンは、ほかにもあります。担当者が仕事を抱え込み、その人が休むと止まる形。社長の時間が、社長でなくてもいい作業に使われている形。この2つは業務の属人化は、マニュアルを作っても解消しない社長が現場から抜けられない会社の、権限移譲の実務手順に書いたので、ここでは扱いません。

02正しいと分かっていることほど、動かない

「なくなったほうがいい」は、響かない

会社の課題を話すとき、「この課題がなくなったらいいですよね」と言っても、あまり響きません。なくなったほうがいいに決まっているし、改善したほうがいいに決まっている。決まっているのに、人は動かないんです。

分かりやすいのがホームページです。一度作ったきり更新していない会社は、めちゃくちゃ多い。更新したい気持ちはあるのに、できない。緊急性を感じないからです。製造業の社長さんと話していても、口では「そろそろ作らなきゃね」と言われます。ところが見積もりに数百万円の金額が並ぶと、話はそこで止まる。「また今度」になって、気づけば10年が経っています。

顔が変わったのは、「今の痛み」の話が出たとき

関わった製造業の会社で、こんなことがありました。1年ほど前にホームページの作り直しを提案し、写真や動画の素材を撮るところまでは一緒にやったものの、そこから進んでいなかった会社です(その経緯は顧問・コンサルの成果が出ないとき、何が起きているのかにも書いています)。久しぶりに伺って、AIで作ったランディングページを見せても、社長の反応は「へぇ、そうなんですね」くらい。手応えはありませんでした。

そこで質問を変えました。「社長じゃなくてもできること、社長がやらなくてもいい作業って、何かありませんか」。出てきたのが図面探しです。注文書が届くと、膨大なファイルの中から図面番号を頼りに、1枚ずつめくって探す。毎日、社長やご家族が手を止めてやっている作業でした。

図面をスキャンしてAIに中身を読ませ、名前をつけてフォルダに保存しておけば、注文書から該当の図面を探すところまで任せられるはずです。そう話した瞬間、社長の顔が変わりました。「今すぐやりたい」。この1年、「いいですね、いつかそうなったら」「じゃあ少しずつ」だった方から、初めて出た「今すぐ」でした。試しに10枚ほどスキャンしてみると、名前の付け替えもフォルダ分けも一瞬で終わりました。

ホームページは「未来のこと」でした。図面探しは「今の痛み」でした。人が動くのは、正論を並べられたときではなく、自分の痛みが消える未来が見えたときです。

「変えてあげよう」とすると、止まる

もう一つよく起きるのが、正しいことを上から渡してしまう形です。社長が良いと思って導入したツールが、現場で使われない。会社の大きさに関係なく、よくある構図です。社長から見れば「ここまで用意しているのに」、現場から見れば「決まったものを渡された」。

「人は変わりたくないのではない。変えられたくないのだ」という言葉があります。私も以前は、伝え方しだいで人は変えられると思って、いろんな話をしてきました。でも、だいたい変わりませんでした。変わるのは、本人が「これは自分に必要だ」と感じたときです。だから導入の前に、「この課題があるから、これが必要ですよね」という筋道を、使う人に届く形で先に作っておきます。ここを飛ばして渡したものは、どれだけ正しくても押し付けに見えます。

課題の洗い出しにも同じことが言えます。あるクライアントの打ち合わせで、スタッフへのヒアリング結果が共有されたとき、並んでいたのは課題と不満ばかりでした。そこで「いいことも聞きましたか。課題だけに目を向けると、新しいことをやる理由が不満の解消になってしまいます」とお伝えしました。不満を消すための変化より、良くなった先が見えている変化のほうが、人は続けられます。

03売上の多くを一社に頼ったまま、次の柱が「いつか」になる

好調なときほど、危なさが見えにくい

製造業の会社でよく話すのが、一社依存から抜け出しましょう、という話です。売上の6割、7割、8割を、ある一社のメーカーでまかなっている会社は、まだまだ多い。その一社が内製化に切り替えたり、その会社がいる市場ごと落ち込んだりすると、売上は一気に減ります。

やっかいなのは、好調なときほど危なさが見えにくいことです。発注が多い時期に合わせて設備を入れ、人を採る。固定費が上がった状態で発注が減る局面に入ると、一気に苦しくなります。

この形は、No.3代行を始めるずっと前、会社員として工作機械メーカーの営業をしていて、製造業の社長さんたちを回っていた頃にも見ていました。売上の8割を大手の一社に頼り、その勢いに合わせて大きく伸びていた会社です。社長は「取引先の業績が悪くなると、うちも引っ張られて仕事がなくなる。それが長く続いたら、たぶん耐えられない」と悩んでいました。同じ頃、一番大きい取引先でも売上の3〜4割ほどで、残りを多くの会社との取引で積み上げている会社もありました。

大口を減らすのではなく、2番手3番手を増やす

一社依存を減らすといっても、一番大きい取引先との取引を減らす話ではありません。そこは保ったまま、なんなら少し伸ばしながら、2番目、3番目の取引先の売上を上げ、取引先の数を増やす。全体が増えた結果として、一社の占める割合が下がる。この順番です。

ここで止まる理由は、前の章と同じです。新しい取引先は、明日つくれるものではありません。早くて1年、長ければもっとかかって、ようやくポツポツと声がかかり始める。今の取引先で仕事が回っているうちは、この1年がかりの仕事が「いつか」になります。そして本当に必要になってから始めても、間に合いません。

打ち手は、営業に行くことだけではありません。その手前に「そもそも知られていない」という問題があることが多いからです。展示会に出る。ホームページを動いている状態にしておく。社長や会社として発信する。一つひとつは地味で、3か月や半年で見ると意味があったのか分からない活動です。

ある会社では、そうした活動を続けていたところ、積極的に採用しようとしていたわけでもないのに、通勤で会社の前を通っていた人がホームページや活動を見て、入社してくれました。過去に挨拶した会社から「ちょっと相談に乗ってもらえませんか」と連絡が来るようになった例もあります。半年前、1年前にやったことが、今になって返ってきている形です。

04行き先は言えるのに、今いる場所を確かめていない

「そういえばそうだった」が出てくる

3つ目は、目指す方向ははっきり言えるのに、今の自分たちがどこにいるかを確かめないまま走っている形です。

No.3代行では、関わり始めるときにヒアリングをします。今どこにいて、どこへ向かいたいのかを一緒に確かめる。すると皆さん、「そういえばそうだった」「忘れてたけど、こう思ってましたね」と言われます。自分の会社のことを一番考えている人でも、今いる場所は忘れるものです。

「どうしたらいいですか」を、具体的な言葉に変える

依頼したい業務がまだ決まっていない、という会社は実際に多くあります。「どうしたらいいですか」という相談は、そのままでは答えようがありません。

そこで順番を決めています。先に現在地です。今どんな課題があって、何が見えているか。次に目的地。どこに向かいたいのか、どういう状態になりたいのか。この2つが並ぶと、その間の距離が見えて、漠然としていた相談が少しずつ具体的な言葉に変わっていきます。方向が漠然としていた会社でも、ロードマップにして見せると、次にやることがはっきりします。

一度で終わらせない

現在地は動きます。前に進めば、目的地のほうも変わっていきます。だから一度聞いて終わりにせず、時間をおいて改めてヒアリングの時間をもらうようにしています。

聞き終わると、思っていたより進んでいたと分かる方もいれば、止まっていたことに気づく方もいます。どちらでも、次の一歩は決めやすくなります。自分の頭の中だけで確かめるより、人に話すほうが確実です。話していると「それはどういう意味ですか」と聞き返されて、そこで初めて自分でも気づくことがあるからです。

05一つ片づいたところで止まり、内側の目だけで回している

課題は、なくならずに移っていく

4つ目は、課題を一つ解決したところを、終点にしてしまう形です。

あるクライアントで、会議の議事録をAIで自動化しました。「これで楽になった」と喜んでもらえたのですが、次に出てきた課題は「議事録をどう活かすか」でした。ツールを入れた時点で、次の問いが生まれていたわけです。

製造業の工程で考えると分かりやすいと思います。流れを一番妨げている工程(ボトルネック)を直すと、今度は別の工程が詰まる。そこも直すと、経営者は「もっと流せるはずだ」と考えて、売上を伸ばし、人を増やそうとする。詰まる場所は消えずに、移っていきます。これは失敗ではありません。会社が前に進んでいるから起きることです。

だから、一つ片づいたところを終点にしないほうがいいと考えています。一つの課題に対して打ち手はいくつもあります。片づいた直後に「次はどこが詰まりそうか」を見ておくと、次の課題が出てきても止まらずに済みます。

中にいると、当たり前が見えなくなる

もう一つは、社内の目だけで次の課題を探している場合です。会社の中にいると、毎日やっていることは当たり前になり、それが変えられるものだと気づきにくくなります。社内の意見だけで改善を続けていると、見える範囲がだんだん狭くなっていきます。

外から入った人間は、会社のことを全部は知りません。関わり始めたばかりの会社では、細かい業務はそのつど聞きながら動いています。ただ、知らないからこそ「ここを変えないと、次に進みにくくないですか」と先入観なしに聞けます。「ん?」という反応が返ってきて、そこから「他の会社ではどうしていたんですか」と話が続けば、それだけで見え方が変わることがあります。他社のやり方をそのまま持ち込むわけではありません。会社によって前提が違うので、考える材料として出すだけです。

064つのパターンを、自社で確かめる

次の8つの質問は、上の4つのパターンに2つずつ対応しています。当てはまった項目があれば、その章をもう一度読んでみてください。いくつ当てはまったら危ない、という線は引いていません。数より、同じ項目に何年も当てはまり続けていないかを見てください。

  • やったほうがいいと分かっていながら、1年以上手をつけていないことがある(02)
  • 導入したツールや仕組みについて、「なぜ必要か」を使う人と話した場がない(02)
  • 一番大きい取引先からの発注が止まったらどうするかを、社内で話したことがない(03)
  • 2番目、3番目の取引先を増やすための活動を、この3か月やっていない(03)
  • 会社が今どこにいて、どこへ向かっているかを、この半年で言葉にしていない(04)
  • 「何から手をつければいいか」と社内で聞かれて、すぐに答えられない(04)
  • 最近解決した課題について、「次にどこが詰まりそうか」をまだ話していない(05)
  • この1年、改善のアイデアが社内の人からしか出ていない(05)

07社長と現場の間に、進める役がいるか

4つのパターンに共通しているのは、どれも「誰かが時間を取って進めないと、止まったままになる仕事」だということです。必要性の筋道を作る。1年がかりの取引先づくりを続ける。現在地を確かめ直す。次に詰まる場所を探す。社長は目の前の判断で手一杯で、社員は日々の業務で手が埋まっています。

社長(No.1)と幹部(No.2)までいる会社は多いのですが、3番目がいない会社が多い、というのが実感です。独立する前に働かせてもらっていた製造業の会社で、私はNo.3の位置に置いてもらっていました。社長とNo.2がうまくいっていないときは、No.2と私で社長の話をする。No.2と私の間がうまくいかないときは、社長と話す。この3人の関係があると、会社はずいぶん回りやすくなります。

three.TのNo.3代行は、この3番目の席に外から入る仕事です。社長の考えを現場に伝わる言葉にして、現場の事情を社長に返す。入り込むと「どうせ社長側の人間だろう」と見られることもあるので、両方の立場を行き来しながら進めます。ときには社長に「これはやめましょう」と言うこともあります。選択肢は増やし、意見も出しますが、最後に決めるのはいつも経営者です。

支援はTALK(60分の無料相談)、DESIGN(何から手をつけるかを決める)、MOVE(一緒に実行する)、SYSTEMIZE(社内で回る形にする)の順で進みます。自分たちでちゃんと進められる会社なら、No.3代行は要りません。目指しているのは、外部がいなくても社内で回る状態で、そこまで行けば私の役目は終わりです。

「いつか」のままになっていることを、話してみる。

three.TのNo.3代行は、社長と現場の間に入り、緊急ではないが重要なことを一緒に進めます。4つのパターンのどれに近いのか分からない、何を頼めばいいかもまだ決まっていない。そういう段階でも構いません。まずは60分、いま止まっていることをお聞かせください。初回相談は無料です。

08よくある質問

中小企業の経営が進まないのは、結局は社長のやる気の問題ではないのですか?

やる気の問題として片づけないほうがいいです。既存の仕事がきちんと回っていて急いで変える理由がないと、会社は止まりやすくなります。締め切りのない仕事は、どれだけ重要でも目の前の仕事に押されて後ろに回ります。やる気を問う前に、その仕事に誰の時間を使うかを決めてください。

社員に正しいことを伝えているのに、動いてくれないのはなぜですか?

正しさだけでは、人は動きにくいからです。本人が「これは自分に必要だ」と感じていないと、筋の通った話でも押し付けに見えます。課題をなくそうと呼びかけるより、その人の今の手間が減る場面や、良くなった後の状態を具体的に見せてください。導入の前に「この課題があるから、これが必要」という筋道を作っておくと、受け取られ方が変わります。

一社依存を減らすには、大口の取引先との取引を減らすべきですか?

減らす必要はありません。一番大きい取引先との取引は保ったまま、2番目、3番目の取引先の売上と取引先の数を増やし、全体に占める割合を下げていきます。新しい取引先から声がかかるまでには、早くても1年ほどかかると考えてください。仕事が回っているうちに始めておくことが、一番の備えになります。

自社の現在地は、どうやって確かめればいいですか?

人に話を聞いてもらうのが確実です。「今どんな課題があって、何が見えているか」と「どこへ向かいたいか」を分けて話すと、その間の距離が見えてきます。頭の中だけで整理すると、分かっているつもりの部分が抜けやすくなります。一度で終わらせず、時間をおいて同じことをやり直してください。

課題を一つ解決したのに、すぐ別の課題が出てきます。進め方が間違っているのですか?

間違っていません。一か所の詰まりを直すと、次に流れを妨げている場所が見えてくるのは自然なことです。問題になるのは、一つ解決したところで手を止め、次に詰まった場所を放っておくことです。解決した直後に「次はどこが詰まりそうか」を話しておくと、止まりにくくなります。

No.3代行は、どんな会社に向いていますか?

進めたいことはあるのに、それを進める人と時間が社内にない会社です。社長は日々の判断で、社員は通常業務で手が埋まっている、という状態が当てはまります。反対に、社内に進める人がいて実際に進んでいる会社には必要ありません。何を頼めばいいかが決まっていない段階でも、現在地を確かめるところから始められます。

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