COLUMN — EXECUTION
経営計画を作ったのに動かない、という相談をよく受けます。作ったのは去年で、ファイルはある。共有もした。それでも半年後に開いてみると、着手すらしていない項目が並んでいる。こういうとき、多くの会社が「計画の作り方が悪かったのか」と考えます。そして翌年、もっと精緻な計画を作る。ですが翌年も同じことが起きます。three.Tは10社でNo.3(社長・幹部に次ぐ3番目の推進役)として社内に入っていますが、計画が動いている会社と止まっている会社の差は、計画の出来ではありませんでした。差がついていたのは、計画を回す場所があるかどうかです。この記事では、その場所——月次の会議体を、頻度・参加者・アジェンダの並び順という実物のレベルまで下ろして整理します。
01「計画が無い」のではない
まず前提を確認します。中小企業が経営計画を持っていないかというと、そうではありません。
2023年版の中小企業白書によると、経営の透明性を高める取組を行っている企業のうち、「経営計画の共有」「経営課題の共有」を「十分実施している」「ある程度実施している」と答えた企業は7割以上でした(出典: 2023年版中小企業白書 第2部第1章第3節 第2-1-62図)。同じ節では、こうした取組を実施している企業は、実施していない企業に比べて売上高増加率の水準(中央値)が高いことも示されています(第2-1-63図)。
つまり、計画を作って共有するところまでは、多くの会社ができている。問題はその先です。作る場はあるのに、回す場が無い。 年に1回、合宿や策定会で計画を作る。そこには時間もお金もかける。ところがその後の11か月には、計画を開く予定が1つも入っていません。
「落ち着いたらやる」は、永遠に来ない
なぜ開かないのか。忙しいからです。ただ、忙しさが解消される日は来ません。
代表のウエツが以前参加したAIのセミナーで、登壇者のひとりが実演で描いた漫画に、こんなセリフがありました。参加者が「今日の勉強会ありがとうございました。とてもためになりました」と言ったあと、こう続けます。「落ち着いたらやります」。次のコマで、講師が返します。「いや、今すぐやれ」。この瞬間、オンラインで参加していた約200名のコメント欄が一斉に動いたそうです。講師は「落ち着いた時が来た人を見たことがない」とも言っていました。
計画も同じです。落ち着いたら見直す、と思っている限り開きません。開く日を先にカレンダーに入れてしまうしかない。 時間は空くのを待つものではなく、先に取るものです。会議体の設計とは、要するにこれを制度にすることです。
02会議が報告会になる3つの構造
では会議を入れれば回るかというと、そうとも限りません。多くの会社に月次会議はあります。にもかかわらず計画が動かないのは、その会議が報告会になっているからです。報告会になるのには、決まった構造があります。
1. アジェンダの1番目が「報告」になっている
会議の冒頭が売上報告や各部の状況報告から始まると、時間の大半がそこで消えます。数字の説明、その背景の説明、質疑。ひと通り終わると残り時間はわずかで、「では次回まで各自進めてください」で終わる。決めるべきことに手をつけないまま解散します。
報告は必要ですが、冒頭に置くと会議の性格そのものが変わります。 最初に置いたものが、その会議の目的として扱われるからです。
2. その場で決められない人だけが集まっている
出席者が全員、持ち帰って社長に確認しないと決められない立場だと、会議では何も決まりません。「確認します」「検討します」が積み上がり、次回また同じ議題が並びます。
これは出席者の問題ではなく、決裁範囲が決まっていないことの問題です。金額や条件でどこまで各自が決めてよいかが決まっていれば、その場で決まります。決裁範囲の切り方については社長が現場から抜けられない会社の、権限移譲の実務手順にまとめています。
3. 前回の宿題を誰も追っていない
前回決めたことが今回のアジェンダに入っていないと、決めたことは実質的に無かったことになります。1回でも「前回の宿題に触れない会議」が挟まると、次から誰も宿題を持ち帰らなくなります。やってもやらなくても同じだと分かるからです。
追われない宿題は、宿題として機能しません。 これは能力や意欲の問題ではなく、仕組みの問題です。
03止まらない会議体の設計
three.Tが実際に入って回している会議は、次の形をとることが多くあります。会社によって調整はしますが、骨格はほぼ共通です。
頻度は2週に1回、時間は60分
月1回だと前回から30日空きます。30日あると現場の状況が変わってしまい、会議の前半が「あれはどうなりましたっけ」の確認で終わります。2週に1回であれば、前回の記憶が残っている状態で始められます。
時間は60分。長くすると報告が膨らみます。決める会議は、短いほうがうまくいきます。
参加者は、決められる人と手を動かす人
出席者は絞ります。基準は2つで、その場で決められる人と、決まったことを実際に動かす人です。情報共有のためだけに出ている人がいると、その人向けの説明で時間が使われます。共有は議事録で足ります。
社長は出席しますが、司会はしません。司会をすると社長が議題を進める役になり、他の出席者が受け身になります。
アジェンダは、この順番で並べる
順番がすべてと言っていいくらい効きます。
- 前回の宿題の結果(10分)— やった/やっていない、だけを確認する。理由の説明はここではしない
- いま詰まっている1件(25分)— 進んでいない項目を1つだけ取り上げ、原因ではなく次の一手を決める
- 次の2週間で、誰が何をするか(15分)— 担当者と期限を口頭で確定し、その場で記録する
- 共有事項(10分)— 報告はここ。最後に置く
報告を最後に置くと、時間が押したときに削られるのは報告になります。これが正しい削られ方です。
宿題は「担当者と期限」だけを記録する
議事録を詳しく書こうとすると、書く負担で続きません。残すのは、決まったこと・担当者・期限の3つだけで足ります。次回の会議は、この3つを読み上げるところから始まります。
04数字の見方と、計画がズレたときの扱い
会議の形が決まったら、次はそこで何を見るかです。
結果の数字だけを見ると、打ち手が出ない
会議で売上と利益だけを見ていると、話が「良かった/悪かった」で終わります。結果の数字は、すでに終わったことの記録なので、その場で打てる手がありません。
一緒に見るのは、結果より手前の数字です。商談の件数、見積を出した数、着手した案件の数、問い合わせの数。これらは今週の行動で動かせる数字なので、会議で決める意味があります。 結果の数字は月次で確認し、会議で議論するのは手前の数字にする、という分け方が現実的です。
数字は正直だが、切り取られた数字は判断材料にならない
代表のウエツがよく引く言葉に、「数字は嘘つかないけど、嘘つきは数字を使う」というものがあります。数字そのものは正直でも、切り取り方によって見え方が変わる、という意味です。
たとえば年商1億という数字だけでは、その事業がうまくいっているかは分かりません。2億で仕入れたものを1億で売っても、年商は1億だからです。社内の会議でも同じことが起きます。「今月は訪問件数が過去最多でした」という報告は、それ自体は事実でも、受注につながっていなければ判断材料にはなりません。数字を出すときは、その数字が何の手前にあるのかをセットにする。 これだけで報告の質が変わります。
計画とズレたら、戻すのではなく次の手を決める
会議で最も時間を溶かすのが、計画とのズレの原因追及です。なぜ未達だったのか、誰の責任か。この議論は、過去に向かっているので前に進みません。
代表のウエツは、起業したときから計画通りにいったことがほとんどない、と振り返っています。会社は人に頼んで作ってもらい、売上が立っても銀行口座がしばらく作れず、想定していなかった会社から声がかかり、逆に最初に声をかけてくれた経営者との契約は終了した。良いズレも悪いズレも両方ありました。そこで身についたのが、元の計画に戻す方法を考えるのではなく、「ふむ、そうきたか。ではこれからどうしようか」と考えるやり方です。時間は前にしか進まないので、いまの状況を踏まえて次に進む方法に、試行錯誤の時間を使う。
会議でも同じで、ズレを見つけたら、原因の説明は1つだけ聞いて、残りの時間は次の2週間で何をするかに使います。計画は外れるのが通常で、外れない年のほうが稀です。 外れる前提で置いておくと、外れたときに慌てず、会議が止まりません。
05回す人が社内にいないときの順序
ここまでの設計は、会議を回す人がいる前提で書いています。ただ、社員10〜100名の規模では、この役が空いていることが少なくありません。
回す人に必要なのは、経営判断ではありません。宿題を追いかけ、詰まっている1件を選び、決まったことを記録し、次回にそれを読み上げる。この繰り返しです。ただ、この役を社長が兼ねると、司会をしながら決裁もすることになり、結局は社長が話す会議になります。幹部が兼ねると、自部門の報告と全体の進行を同時にやることになり、どちらも中途半端になりがちです。
社内にこの役を置けるなら、それが一番です。置けない期間の受け皿として、three.TのNo.3代行があります。社長(No.1)、幹部(No.2)に次ぐ3番目の推進役として会議体を設計し、しばらくは自分で回します。そのうえで、社内で回せる状態になったら進行ごと引き渡します。外部が回し続けることが目的ではありません。
支援はTALK(60分の無料相談)、DESIGN(何から手をつけるかを決める)、MOVE(一緒に実行する)、SYSTEMIZE(社内で回る形にする)の順で進みます。会議体の設計と引き渡しは、このSYSTEMIZEにあたります。
社内で育てるか外部に頼むかの整理は中小企業の「経営参謀」の見つけ方に、外部に頼んだのに動かなかった場合に何が起きているかは顧問・コンサルの成果が出ないとき、何が起きているのかにまとめています。
計画を、開く日から決める。
three.TのNo.3代行は、経営計画を作り直すところからではなく、計画を回す場所を作るところから入ります。会議の頻度と参加者を決め、アジェンダの順番を組み替え、宿題を追いかける。しばらくは私たちが回し、社内で回るようになったら引き渡します。まずは60分、いま止まったままになっている計画をお聞かせください。初回相談は無料です。
06よくある質問
経営計画が実行されないのは、計画の作り方が悪いからですか?
計画の中身よりも、計画を開く予定が入っていないことのほうが原因として多いです。作る場(年1回の策定会)には時間をかけていても、その後の11か月に計画を開く日が1日も入っていない、という状態がよくあります。まず2週に1回、60分の会議をカレンダーに固定してください。計画の精度を上げるのは、回り始めてからで間に合います。
月次の経営会議はありますが、報告会になっています。どう変えればいいですか?
アジェンダの順番を変えてください。報告を最後に置き、冒頭を「前回の宿題の結果」にします。順番を変えるだけで会議の性格が変わります。時間が押したときに削られるのが報告になるので、決めるべきことが必ず扱われます。
会議の頻度は月1回では足りませんか?
進めている期間は2週に1回をおすすめします。月1回だと前回から30日空き、状況が変わってしまうため、会議の前半が確認だけで終わります。運用が安定してからは月1回に戻して構いません。
会議には誰を出席させるべきですか?
その場で決められる人と、決まったことを実際に動かす人だけです。情報共有のために出席している人がいると、その人向けの説明に時間が使われます。共有は議事録で足ります。社長は出席しますが、司会は別の人が担当したほうが、他の出席者が主体的になります。
会議ではどの数字を見ればいいですか?
売上や利益といった結果の数字は月次の確認にとどめ、議論するのは商談件数・見積提出数・着手件数のような手前の数字にしてください。結果の数字はすでに終わったことの記録なので、その場で打てる手がありません。手前の数字は今週の行動で動かせるため、会議で決める意味があります。
計画と実績がズレたとき、会議で何を話すべきですか?
原因の追及ではなく、次の2週間で何をするかを決めてください。原因の説明は1つだけ聞けば足ります。計画は外れるのが通常で、外れない年のほうが稀です。元の計画に戻す方法を探すより、いまの状況から次にどう進むかに時間を使うほうが、結果的に早く進みます。
会議を回す人が社内にいません。社長がやってはいけませんか?
社長が回すと、司会をしながら決裁もすることになり、社長が話す時間が長い会議になりがちです。可能であれば、進行だけを別の人に担当してもらってください。進行役に必要なのは経営判断ではなく、宿題を追う・詰まっている議題を選ぶ・決まったことを記録する、の3つです。社内に置けない期間は、外部に一時的に持たせて、回るようになってから社内に引き渡す方法もあります。